新婚旅行でニュージーランドに行くはずだった我々夫婦。よりによって”電子ビザの事前申請を忘れる” という、旅の前に一番やってはならない大失態をしでかし、新婚旅行を理由に獲得した貴重すぎる長期休暇を棒に振りそうになる。がしかし、持ち前の切り替え力と行動力をこれでもかと発揮。急遽行き先をヨーロッパに変更。翌日のフライト直前までに、全ての交通手段と宿泊先の予約を完了させ、誰にも知られることなく無事に日本を旅立った。
まずは成田から中国・長沙へ。上海から南西方向へ約1,000km、湖南省に位置する都市。中国南方航空でのフライト。スタッフは全員中国人だ。妻はその風貌からか、大抵中国人に間違われる。今回も例外ではなく、機内食で肉か魚か聞かれる時は、必ず中国語で聞かれる。しかし、中国出張や職場での中国人との関わりの中で覚えた、生きた”にわか中国語” 知識を総動員すると、その状況から相手が何を言おうとしてるのか、おおよそ検討がついてしまう。英語プリーズ、と言うのも煩わしく、それらしき中国語で返すとそれで事足りてしまうのが面白く、わざわざ「日本人ですよ」と誤解を解かなくてもいいかなと思ってしまう。
ある時、中国駐在歴の長い先輩に語学の習得について質問したことがあったが、「英語は難しい。勉強し続けてもなかなか身に付かない。でも中国語はそんなに勉強してなくても勝手に脳を侵食してくる感じがする」と言っていたことをふと思い出した。
長沙までのフライト時間は4時間55分。あっという間に時間が過ぎて無事に到着。空港に降り立つと、”熱烈歓迎”の看板が。出発前に”広州で乗り換えてニュージーランドへ行く”と伝えていた同僚に”長沙”の文字入り熱烈歓迎看板の写真を送るというマニアックないたずらを仕掛ける。一緒にいるはずの中国人研修生にも伝わり、頭に?がたくさん浮かぶことだろう、と想像して少しにやける。
待ち時間が6時間ほどあるので、市街に出られるだけの時間はないが一旦入国することに。中国は14日以内の滞在であればビザは不要であると、何度かの中国出張で心得ていた。ゲートを出た瞬間に、白タクのおっちゃんたちの熱烈な勧誘にあったが、No! No!と言いながらあしらい続ける。ひとまず出発ロビーの”PACIFIC COFFEE”で休憩することに。ここでもにわか中国語知識を使い、”アメリカン珈琲を2杯” が一発で通じたことが嬉しい。
上空から見下ろした長沙は比較的田舎っぽく見えたが、空港自体はかなり大きい。でも、中国の空港にしては普通なのかもしれない。外は既に暗く、白樺の木が白く浮かび上がっていたが、近づいてよくよく見てみると、それは白樺ではなくただ白いペンキで塗られた何らかの木であった。2人で大爆笑。何故?何のために??
その後、いかにもローカルな雰囲気の”東北餃子館”という店で夕食をとった。それぞれ牛肉麺を1杯ずつ注文して、白菜と豚肉の餃子はシェアした。期待通りの美味しさ。中国初上陸の夫も、本場の中華料理の味に満足した模様。
同じ並びにあったコンビニを物色し、再びターミナルに戻る。フランクフルト行きの出発手続きを終えて、出発ゲートを通ろうとしたら、なんか荷物が軽い気がする…。3つ持っていたはずの荷物が2つしかない!しかも、一番大きなリュックがない!慌ててチェックインカウンターの方に戻ったら、とても不自然な場所にぽつんと、見覚えのあるリュックが。並んでいる間、重くて床に下ろしたままスーツケースとミニバッグだけを運んでしまったらしい。もしこれがなくなっていたら、せっかく成田空港で調達した防寒着と、大事な一眼レフを紛失していたところだった。今回の旅では、なぜこうも普段は絶対に起こらないことばかり起こるのか!しかもまだ目的地にも着いていないのに!
フランクフルト行きの飛行機はガラガラ。空席だらけだったので、夫には4列の席に移動してもらい、私は2席使って横たわって寝た。狭いことは狭いけど、丸くなれば収まったし、何より座ったまま12時間のフライトを乗り切るよりは遥かに快適に過ごせる。他の乗客もみんな自由に動き回っており、乗務員からのお咎めは一切なし。
時差ボケ対策のため、機内では睡眠に徹することにした。フランクフルトへの到着時間は早朝5時25分。本当は4時頃まで寝ていたかったけど、3時を過ぎた頃に照明が点灯し、食事が運ばれて来たので渋々起床。とは言え、何度も目が覚めたけど合計10時間ぐらいは寝れたので気持ちが楽。なんとなく頭がフラフラする感覚はあるが、目は冴えているので今日1日は持つだろう。
真冬の海外旅行は今回が初めてだったのだが、1つ気がついたことがある。それは、真冬の空港、機内は暖房が効きすぎてとにかく暑い!逆に夏は冷房が効きすぎて寒い!極暖インナーを着て防寒対策ばっちりだったのだが、暑くて本当にやってられない。結局機内では、レギンスも含め極暖インナーは脱ぎ、裸足で過ごした。着替えやすいという点では、ロングスカートを履いて飛行機に乗ったのは大正解であった。
そうこうしているうちに、フランクフルト国際空港に無事到着。さすが世界最大級のハブ空港ということもあり、敷地が広大すぎて、着陸時は空港しか見えなかった。とりあえず、”ニュージーランドへ行ってきます” と伝えていた家族や同僚に、「無事にフランクフルトに着いた。理由は聞かないでくれ。」と連絡を入れる。
次のフライトの乗り場であるターミナル1へ移動し、朝から開いている空港内のお店を見て回った。筆記具のLAMY(ラミー)、ノートのLEUCHTTURM(ロイヒトトゥルム)、靴のBIRKENSTOCK(ビルケンシュトック)など、日本でもお馴染みの大好きなドイツブランドが並び、まだ空港から一歩も出ていないのに既にドイツにいることが楽しくなってきた。でもこの後も再び飛行機を乗り継ぎ、移動しなければならない。時間に余裕があったので、空港内のスタバでここまでの出来事をノートに記録する。
次はルフトハンザ航空でベルギーのブリュッセルを経由し、スロベニアのリュブリャナへ。フランクフルト空港のチェックインカウンターのおじさんが、一般的な空港係員のイメージを180度ひっくり返すほど陽気な人で度肝を抜かれてしまった。私たちのことを日本人だと認識するなり、「コンニチハ!」その後は英語で「どこから来たんだ?」「この後はどこへ行くんだ?」と質問攻め。チケットを発券しながら口笛まで吹きはじめる始末。当然こちらは事務的に手続きが進むものだと思っていたので、心の準備ができておらず頭が英語で雑談モードにはなってない。笑顔は作りつつ若干温度差のある対応をしてしまったと思う。すまん、おじさん。この人は極端だったが、入国審査の係員や売店の店員など、全体的に感じの良い人が多かった気がする。ルフトハンザ航空の男性キャビンアテンダントは、サンタクロースの帽子を被っていて、とても明るく振る舞っていた。全く実感湧かないが、クリスマスイブだったんだ。
フライトの前には、空港内の”Perfect Day” というカフェで昼食をとった。中身はバジルペースト、ツナ、焼きナス、水菜。ここに辿り着くまでに多くのサンドイッチ屋を通り過ぎたが、どの店にも日本では考えられない大きさのサンドイッチが並んでいる。1つで食べ応え抜群。
13時25分にフランクフルトを出発し、17時10分に無事リュブリャナに到着。ここに辿り着くまでに既に多くの話題が生まれたが、これらはまだ前日譚のようなもので、旅の本番はここから。
とは言いつつ、移動の時間も含めて旅。目的地だけ楽しんでいたら、旅の楽しみは半分以下になる。寧ろ、圧倒的長時間を占める移動中にこそ、意外な出来事がたくさん潜んでいる。その過程全てに目を凝らしていると、それだけで1話分書けるものだな、と今改めて振り返ってみて思う。
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